皮膜特性

ta-C

「ta-C(Tetrahedral Amorphaous Carbon)皮膜」は、「水素フリーのDLC皮膜」とも呼ばれます。水素フリーのため、超高硬度のDLC成膜が可能であり、アルミ切削向け工具や自動車部品に使用されています。

<摩擦係数の比較>
DLC皮膜は窒化物系皮膜(CrN, TiAlN, TiCN, TiN)に比べて摩擦係数が低く、0.2以下の低摩擦係数を得られます。

摺動性パーツ
「DLC皮膜」の形成方法

DLC皮膜の形成方法には、UBMS法、AIP(アークイオンプレーティング)法、CVD法の3種類があり、「ta-c皮膜」はAIP法を用いて形成します。

<AIP法>
「ta-C」領域の膜を形成することができ、水素フリーの膜を実現できます。
UBMS法よりもイオン化率が高いため、ダイヤモンド的性質の高い硬い膜を形成できます。
600℃程度の耐熱性があるため、UBMS法やCVD法よりも耐酸化性の高い膜を形成することができます。

<CVD法>
AIP法やUBMS法よりも、5倍以上の速さで皮膜を形成することができます。
メタンやアセチレンなどの炭化水素が必要となるため、水素フリーの膜は形成できません。

<UBMS法>
平滑な表面が得られるというメリットがありますが、イオン化率が数%以下と低く、レートが非常に遅いというデメリットもあります。

DLC皮膜

推奨アプリケーション

・超硬エンドミル
・ターニングインサート
・ミリングインサート
・自動車部品など

適用事例

ピストンリング

エンジン全体の摩擦損失のうち、約半分はピストン周辺で発生しており、ピストンリングの摩擦低減は燃費向上を目指す上で非常に重要な課題といえます。「ta-C皮膜」は、この課題に対するソリューションとして採用され、摩擦損失の低減および燃費向上に貢献しています。
※スパッタリングやCVD法で生成される「DLC皮膜」は水素を含有しているため、ガソリン車用エンジンオイルの潤滑下では摩擦低減効果が小さくなってしまいます。AIP法で生成される「ta-C皮膜」は水素を含有していないため、潤滑下でも優れた摩擦低減効果を発揮します。

ピストンリング

切削工具
自動車の軽量化にともない、車体などの材料にアルミニウムを用いる割合が増加しています。
しかし、アルミニウムや銅といった非鉄金属を切削する場合、切削工具の切刃部分に被削材が凝着し、それが切削抵抗となり、刃先が折損するといった問題が生じることがあります。これらの問題の解決法として、摩擦係数の低さと高硬度化を両立できる「ta-C皮膜」が採用されています。

 
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