皮膜特性

NS/R(TiCrAlN系多層/希土類添加)

「NS/R皮膜」は、 機能の異なる二つの層によって構成され、高い靭性、密着性、高硬度、耐酸化性を実現します。

<皮膜構造>
トップコート:高硬度かつ耐酸化性に優れた皮膜
中間層:高い靭性と密着性を持った皮膜

皮膜構造

推奨アプリケーション

・ホブ
・ターニングインサート
・ミリングインサート

適用事例

HSSホブ

歯車を製造するための切削工具である 「ホブ」などのHSS工具は、ドライ切削をおこなう際、摩擦によって工具が高温になり、過度の温度上昇は刃先の性能低下を招きます。神戸製鋼所は、この問題を解決するために「熱伝導率の抑制」「耐酸化性の向上」「特殊前処理による密着性の向上」「膜の低応力化」という4つのアプローチで新たな皮膜(NS/R皮膜)を開発。ホブを用いた切削加工において、工程ロスの軽減と生産効率の向上を実現しました。

HSSホブ
「熱伝導率の抑制」
「NS/R皮膜」の熱伝導率は1W/mK以下。汎用皮膜(TiAlN皮膜など)による表面処理よりも、基材(HSS)の温度上昇を抑えることが可能です。
※「TiAlN皮膜」の熱伝導率は6W/mk。

熱伝導率の抑制
「耐酸化性の向上」
酸化重量テストにおいて、「NS/R皮膜」は1200℃の高温下でも安定しており、高い耐酸化性が示されました。
※「TiAlN皮膜」と「AlCrN皮膜で」は800℃を超えると不安定化します。

耐酸化性の向上
特殊前処理による「密着性の向上」

基材の表面に、水と研磨材の混合液(スラリー)を圧縮エアによって噴射。成膜前にこのブラスト処理を施すことで、皮膜の密着性が向上します。

SFC蒸発源による「膜の低応力化」

SFC蒸発源は、FCやSCなどの蒸発源に比べ、膜応力を下げることが可能。適切な皮膜選択と、このSFC蒸発源を組み合わせることで、コーティングの寿命を向上させます。

切削試験結果

「SFC蒸発源の使用による低応力化」と「特殊前処理」によって密着性がアップし、さらに寿命が改善されました。

密着性・寿命が改善
切削試験結果

「TiAlN皮膜」は、切削距離 10m時点で寿命(200μm)に到達。これに対して「NS/R皮膜」は、切削距離40m時点でも摩耗量が100μm以下。大幅な寿命UPが確認されました。

摩擦量の比較
 
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